2020年7月8日水曜日

有責配偶者の離婚請求について・その3

有責配偶者からの離婚請求の3つの基準のうち、前回は「長期間の別居」についてご説明しました。
今回は、「未成熟子の不存在」についてお書きしたいと思います。

まず、未成年者ではなく、未成熟子となっている点に注意が必要です。

未成熟子とは、必ずしも自然年齢によって定まるものではありません。
経済的に独立していて生計が立てられる状態にあるかどうか、そのように社会から期待される年齢かという観点から判断されるといえます。

たとえば、大学生の場合、未成年者ではないかもしれませんが、未成熟子であると判断されることもあります。
一方で、潜在的に働くことはできるとして、否定した裁判例もあります。
統一的な基準はありませんが、経済的に自立する力を考えるので、例えば、社会人として働いた後に大学で学び直している子の場合には未成熟子とはいいがたいでしょう。

また、子に障害がある場合に、年齢的には成人していても、未成熟子に準じると判断した裁判例もあります。
障害の程度や介護の必要性などによって異なりますので、ケースバイケースの判断となります。

未成熟子がいる場合には、有責配偶者からの離婚請求は認められづらいとはいえます。
しかし、未成熟子がいても、有責配偶者からの離婚請求が認められる場合もあります最高裁平成6年2月8日など)。

未成熟子の存在は、離婚を認めない方向に働くファクターの一つになりますが、それで離婚の可否が決定づけられるとまではいえず、総合判断になります。