2020年6月24日水曜日

有責配偶者の離婚請求について・その2

有責配偶者からの離婚請求には3つの基準があることを前回お伝えしました。昭和62年の最高裁判例によるものですが最高裁昭和62年9月2日)、今でも用いられている基準です
今回は、3つの基準のうち、「長期間の別居」について検討します。

上述の最高裁判例は、別居の期間について、
ア 両当事者の年齢
イ 同居期間
を考えて、夫婦の別居期間がこれらとの対比において相当の長期間に及ぶかどうかを検討しました。

例えば、7年という別居期間があるとして、30年連れ添ってきた熟年の夫婦の場合には、7年の別居は長期とは認めづらい方向に傾くでしょう。一方、結婚して2年の若い夫婦の場合には、7年の別居は長期と認めやすい方向に傾くでしょう。

もちろん、長期間の別居以外の二つの基準(未成熟子の不存在、特段の事情の不存在(苛酷状況の不存在))もあわせて判断されますので、別居期間だけですべてが決まるわけではありません。

とはいえ、別居期間の長短が重視されるようになっているケースは多く、特に有責配偶者の離婚請求のケースにおいては別居期間はかなり重視されているように実務上は感じます。
離婚訴訟にまで発展して争われるケースでは別居期間が10年を超えているものが少なくありません。


この点、アメリカやヨーロッパ諸国では婚姻関係が破綻しているのか否かという実態面が重視される傾向にあります。
外国人の依頼者の方からは、日本の法律が、壊れた夫婦であっても長期間夫婦であることを強制しているのは理解できない、という意見を聞くことも多いです。
海外にはアリモニーといって(メンテナンスということも)、離婚後の元配偶者の生活費を一定期間扶養する制度があります。
日本にはない制度です。
離婚は破綻によって認めるけれども、離婚後にも経済的なサポートを一定期間認めるという考え方なのだろうと思います。










2020年6月12日金曜日

有責配偶者の離婚請求について

 夫婦の関係が壊れる原因を作った有責配偶者の方からの離婚請求が認められるのかは、実務上、しばしば争われます。
 昭和20年台の判決では、背徳行為を行った者の離婚請求を認めるのは道徳観念が許さないなどとされ、有責配偶者からの離婚請求は否定されていました。
 しかし、時代と共に、裁判所の判断も変化していきました。

 昭和62年の最高裁判決により、有責配偶者からの離婚請求が認められる3つの基準が示されました(最高裁昭和62年9月2日)。
 30年以上前の判例ですが、現在も用いられる判断の基準となっています。

 具体的には、
1 長期間の別居
2 未成熟子の不存在
3 特段の事情の不存在(苛酷状況の不存在)

の3つが基準とされています。

 この3つの基準は、全てを満たさないとならない要件というより、ケースバイケースで、3つの基準を総合的に判断をするようになっていると考えられます。

 

2020年6月3日水曜日

面会交流の事例検討(審判に対する抗告事件)その4

子供と離れて暮らす父親が、子供との面会交流を求めて面会交流の調停を申し立て、家庭裁判所で面会交流を認める審判を得ましたが、母親側が不服として抗告し、高等裁判所が決定をした事例(平成30年11月20日東京高等裁判所決定)の検討の4回目です。

1回目は、面会交流の重要性や意義
2回目は、頻度の時間についての判断
3回目は、立ち合いの可否や方法についての判断
を検討しました。
今回は、曜日や時間、引渡方法、代替日の決め方についての判断を検討します。

面会交流を具体的にどのような方法で実施するのかについては、その時々のスケジュール、子供の体調、天候など様々な事情を踏まえつつ、父と母が協議をして定める方法を取るのが、本来は、双方にとって、望ましいと言えます。

しかし、当事者間の対立が強ったり、不信感が強かったりする場合もあります。
そうしたケースでは、現実的に、当事者間で協議をすることが難しかったり、協議をしてもまとまらないことが起こりえます。

この裁判例でもそうした懸念に対する判断がなされました。
前記認定した過去の経緯や本件における抗告人の主張からすると、抗告人の相手方に対する不信感が強いことがうかがわれ、当事者間の協議により定めるべき事項について協議が調わないことが懸念されるから、面会交流の確実な実施のためには、面会交流の曜日や時間、引渡方法、代替日は、第1次的には当事者の協議によることとするが、協議が調わない場合についても定めておくこととする。」

つまり、第一次的には当事者の協議によるけれども、協議が調わない場合の方法も定めることとする、とされています。

具体的には、例えば、面会交流の時間については、
各回の面会交流時間 5時間とし、具体的な時間帯は当事者間の協議により定める。ただし、当事者間の協議が調わない場合は、午前10時から午後3時までとする。」
との判断がなされました。

協議が調わなかったために面会交流が実施できなくなるという結果を避けるため、協議が調わない場合の具体的な実施方法についても、第二次的に、定められています。

面会交流の重要性にかんがみて、できるだけ確実に面会交流が実施されるように、という考えが下地にあると言えるでしょう。