2020年7月8日水曜日

有責配偶者の離婚請求について・その3

有責配偶者からの離婚請求の3つの基準のうち、前回は「長期間の別居」についてご説明しました。
今回は、「未成熟子の不存在」についてお書きしたいと思います。

まず、未成年者ではなく、未成熟子となっている点に注意が必要です。

未成熟子とは、必ずしも自然年齢によって定まるものではありません。
経済的に独立していて生計が立てられる状態にあるかどうか、そのように社会から期待される年齢かという観点から判断されるといえます。

たとえば、大学生の場合、未成年者ではないかもしれませんが、未成熟子であると判断されることもあります。
一方で、潜在的に働くことはできるとして、否定した裁判例もあります。
統一的な基準はありませんが、経済的に自立する力を考えるので、例えば、社会人として働いた後に大学で学び直している子の場合には未成熟子とはいいがたいでしょう。

また、子に障害がある場合に、年齢的には成人していても、未成熟子に準じると判断した裁判例もあります。
障害の程度や介護の必要性などによって異なりますので、ケースバイケースの判断となります。

未成熟子がいる場合には、有責配偶者からの離婚請求は認められづらいとはいえます。
しかし、未成熟子がいても、有責配偶者からの離婚請求が認められる場合もあります最高裁平成6年2月8日など)。

未成熟子の存在は、離婚を認めない方向に働くファクターの一つになりますが、それで離婚の可否が決定づけられるとまではいえず、総合判断になります。







2020年6月24日水曜日

有責配偶者の離婚請求について・その2

有責配偶者からの離婚請求には3つの基準があることを前回お伝えしました。昭和62年の最高裁判例によるものですが最高裁昭和62年9月2日)、今でも用いられている基準です
今回は、3つの基準のうち、「長期間の別居」について検討します。

上述の最高裁判例は、別居の期間について、
ア 両当事者の年齢
イ 同居期間
を考えて、夫婦の別居期間がこれらとの対比において相当の長期間に及ぶかどうかを検討しました。

例えば、7年という別居期間があるとして、30年連れ添ってきた熟年の夫婦の場合には、7年の別居は長期とは認めづらい方向に傾くでしょう。一方、結婚して2年の若い夫婦の場合には、7年の別居は長期と認めやすい方向に傾くでしょう。

もちろん、長期間の別居以外の二つの基準(未成熟子の不存在、特段の事情の不存在(苛酷状況の不存在))もあわせて判断されますので、別居期間だけですべてが決まるわけではありません。

とはいえ、別居期間の長短が重視されるようになっているケースは多く、特に有責配偶者の離婚請求のケースにおいては別居期間はかなり重視されているように実務上は感じます。
離婚訴訟にまで発展して争われるケースでは別居期間が10年を超えているものが少なくありません。


この点、アメリカやヨーロッパ諸国では婚姻関係が破綻しているのか否かという実態面が重視される傾向にあります。
外国人の依頼者の方からは、日本の法律が、壊れた夫婦であっても長期間夫婦であることを強制しているのは理解できない、という意見を聞くことも多いです。
海外にはアリモニーといって(メンテナンスということも)、離婚後の元配偶者の生活費を一定期間扶養する制度があります。
日本にはない制度です。
離婚は破綻によって認めるけれども、離婚後にも経済的なサポートを一定期間認めるという考え方なのだろうと思います。










2020年6月12日金曜日

有責配偶者の離婚請求について

 夫婦の関係が壊れる原因を作った有責配偶者の方からの離婚請求が認められるのかは、実務上、しばしば争われます。
 昭和20年台の判決では、背徳行為を行った者の離婚請求を認めるのは道徳観念が許さないなどとされ、有責配偶者からの離婚請求は否定されていました。
 しかし、時代と共に、裁判所の判断も変化していきました。

 昭和62年の最高裁判決により、有責配偶者からの離婚請求が認められる3つの基準が示されました(最高裁昭和62年9月2日)。
 30年以上前の判例ですが、現在も用いられる判断の基準となっています。

 具体的には、
1 長期間の別居
2 未成熟子の不存在
3 特段の事情の不存在(苛酷状況の不存在)

の3つが基準とされています。

 この3つの基準は、全てを満たさないとならない要件というより、ケースバイケースで、3つの基準を総合的に判断をするようになっていると考えられます。

 

2020年6月3日水曜日

面会交流の事例検討(審判に対する抗告事件)その4

子供と離れて暮らす父親が、子供との面会交流を求めて面会交流の調停を申し立て、家庭裁判所で面会交流を認める審判を得ましたが、母親側が不服として抗告し、高等裁判所が決定をした事例(平成30年11月20日東京高等裁判所決定)の検討の4回目です。

1回目は、面会交流の重要性や意義
2回目は、頻度の時間についての判断
3回目は、立ち合いの可否や方法についての判断
を検討しました。
今回は、曜日や時間、引渡方法、代替日の決め方についての判断を検討します。

面会交流を具体的にどのような方法で実施するのかについては、その時々のスケジュール、子供の体調、天候など様々な事情を踏まえつつ、父と母が協議をして定める方法を取るのが、本来は、双方にとって、望ましいと言えます。

しかし、当事者間の対立が強ったり、不信感が強かったりする場合もあります。
そうしたケースでは、現実的に、当事者間で協議をすることが難しかったり、協議をしてもまとまらないことが起こりえます。

この裁判例でもそうした懸念に対する判断がなされました。
前記認定した過去の経緯や本件における抗告人の主張からすると、抗告人の相手方に対する不信感が強いことがうかがわれ、当事者間の協議により定めるべき事項について協議が調わないことが懸念されるから、面会交流の確実な実施のためには、面会交流の曜日や時間、引渡方法、代替日は、第1次的には当事者の協議によることとするが、協議が調わない場合についても定めておくこととする。」

つまり、第一次的には当事者の協議によるけれども、協議が調わない場合の方法も定めることとする、とされています。

具体的には、例えば、面会交流の時間については、
各回の面会交流時間 5時間とし、具体的な時間帯は当事者間の協議により定める。ただし、当事者間の協議が調わない場合は、午前10時から午後3時までとする。」
との判断がなされました。

協議が調わなかったために面会交流が実施できなくなるという結果を避けるため、協議が調わない場合の具体的な実施方法についても、第二次的に、定められています。

面会交流の重要性にかんがみて、できるだけ確実に面会交流が実施されるように、という考えが下地にあると言えるでしょう。






2020年5月28日木曜日

面会交流の事例検討(審判に対する抗告事件)その3

子供と離れて暮らす父親が、子供との面会交流を求めて面会交流の調停を申し立て、家庭裁判所で面会交流を認める審判を得ましたが、母親側が不服として抗告し、高等裁判所が決定をした事例(平成30年11月20日東京高等裁判所決定)の検討の3回目です。

今回は「立ち合い」が認められるかについての判断部分について検討します。

面会交流は普段は子供と離れて暮らす非監護親が子供と交流できる機会ですので、監護親の立ち合いを付けずに、いわゆる水入らずで実施されることが本来の形だと言えます。

しかし、父母の関係が悪く、特に、監護親が非監護親による連れ去りを心配している場合など、立ち合いをつけることを条件に面会交流が実施されているケースも少なくないかもしれません。

この裁判例でも、母親(抗告人)は連れ去りのおそれを主張し、立ち合いを求め、かつ、第三者機関による立ち合いがなされるべきだと主張しました。

この点、高等裁判所は、未成年者の年齢からすると,相手方と未成年者との面会交流を子の福祉に適うように実施していくためには,監護者である抗告人の協力が不可欠であるところ,抗告人は,相手方の対応に不信を抱き,面会交流を中断したり,平成30年1月18日以降は信頼関係が破壊されたなどとして,面会交流の実施を拒んだりしていることからすると,現段階においては,未成年者と相手方との面会交流が継続的に行われるようにすることが何より大切であり,そのためには,前述のとおり,抗告人が主張する相手方による未成年者の連れ去りの懸念についても十分な配慮をすることが必要である。」としました。

監護親が連れ去りの懸念を持っていることに対する配慮が必要だとしており、その理由は、面会交流が継続的に行われるようにすることが何よりも大切であるから、という判断です。

そして、監護親が抱く連れ去りの懸念への配慮として、それまでの面会交流の実施状況を踏まえ、当分の間は,抗告人の立会いの下で面会交流を実施することが相当であり,抗告人と相手方が,未成年者の父母として子の利益に十分に配慮して行動すべきことはいうまでもないところであり,このような態様による面会交流が子の福祉に反するものとはいえない。」として、立ち合いを認めました。

立ち合いを認めるものの、期間は「当分の間」であるとしています。

面会交流に対する抵抗感が強い監護親の協力を得ながら実施していくためには、当分の間は、立ち合いを認めつつも、継続的に実施できる環境を作ろうという考えのように思われます。
悩ましい判断だったことがうかがえます。

なお、第三者機関の利用については、「相手方が反対していることに加え,費用負担の問題が生じるところ,前記のとおり婚姻費用等の支払をめぐって面会交流が中断した経緯をも考慮すると,第三者機関の利用による面会交流は適切とはいえない。」とし、認めませんでした。





2020年5月25日月曜日

面会交流の事例検討(審判に対する抗告事件)その2

子供と離れて暮らす父親が、子供との面会交流を求めて面会交流の調停を申し立て、家庭裁判所で面会交流を認める審判を得ましたが、母親側が不服として抗告し、高等裁判所が決定をした事例(平成30年11月20日東京高等裁判所決定)の検討の2回目です。

前回は面会交流の意義や重要性についての判断部分を紹介しました。

面会交流が重要であるのは当然として、では、具体的に、当該ケースにおいて、どのように実施していくのかというところは、監護親と非監護親で意見が分かれることが多いものです。
この裁判例でも調停で折り合いがつかず、審判、抗告審へと進んでいます。

今回は、頻度や時間についての高等裁判所の判断部分を紹介します。

頻度:月に1回
時間:各回5時間
との判断がなされました。

このケースでは、それまで月に1回、2時間程度で(数回)実施されていました。

この点、抗告審は、「概ね月に1回、2時間程度の頻度で数回行われた面会交流において、対未成年者との関係において問題が見受けられず、良好に実施されたことからすると、月に1回の面会交流とするが、未成年者がより自由に相手方と面会できるよう、1回あたりの時間を長くすることが相当である。」
として、面会交流の実績にかんがみて、1回あたりの時間を長くすることが相当との判断なされました。

また、場所については、それまでは妻側の代理人弁護士の事務所での実施でしたが、
「面会交流の際に、未成年者が非監護親との交流を楽しみ、のびのびと過ごすためには、実施場所について限定することは相当ではない。」
と判断しました。

ケースによって事情は異なるでしょうし、また、月に1回5時間の交流が十分といえるかは議論があるところでしょう。
とはいえ、子供がより自由に面会できるように、交流を楽しみ、のびのびと過ごせるようにと、子供の利益を優先する考えが示されており、それが重要であることは確かです。





2020年5月20日水曜日

面会交流の事例検討(審判に対する抗告事件)その1

面会交流は、離れていても子供に会いたい親の願いの切実さと、面会交流への不安を抱える親の対立などがあり、困難事例が多い分野です。裁判例も多くあります。

子供と離れて暮らす父親が、子供との面会交流を求めて面会交流の調停を申し立て、家庭裁判所で面会交流を認める審判を得ましたが、母親側が不服として抗告し、高等裁判所が決定をした事例(平成30年11月20日東京高等裁判所決定)を検討します。

いろいろなファクターについて審理検討されているので、何回かに分けて解説します。

まずは、面会交流の意義や重要性についての判断部分です。

父母が別居しても,子にとっては親であることには変わりはなく、非監護親からの愛情も感じられることが子の健全な成長のために重要であり、非監護親と子との面会交流が実現することにより、別居等による子の喪失感等が軽減されることが期待できるから、子の福祉に反しない限り、非監護親と子との面会交流は認められるべきである。」

「面会交流の可否については、非監護親と子との関係、子の心身の状況、子の意向及び心情、監護親と非監護親との関係その他子をめぐる一切の事情を考慮した上で、子の利益を最も優先して判断すべきである」


改正後の民法766条(平成24年4月1日施行)は、父母が協議上の離婚をするときに協議で定める「子の監護について必要な事項」の具体例として「父又は母と子との面会及びその他の交流」(面会交流)及び「子の監護に要する費用の分担」(養育費の分担)を明示し、子の監護について必要な事項を定めるに当たっては子の利益を最も優先して考慮しなければならないと明記しました。


面会交流についての法務省のリーフレットをご紹介します。(http://www.moj.go.jp/content/000096597.pdf
面会交流の意義や子どものための面会交流の実施について書かれています。




2020年5月15日金曜日

財産分与・オーバーローンの自宅不動産 その4

「離婚問題・破綻後に自宅不動産に住み続けられるのか」でご紹介した東京地裁平成24年12月27日判決(判例時報2179号78頁)を参考にした、オーバーローンの自宅不動産についての検討の4回目です。

前回まで、オーバーローンの不動産は、財産分与では清算の対象とならなくても、共有関係で清算する方法があることを紹介しました。
妻側の貢献を評価する方法についての解説をしました。

今回は、夫側の権利はどのように補償されるかについて書きます。


自宅不動産は夫婦の共有であると認められましたが、別居となり、不動産には妻が住み続けている場合、夫が使用できていない点はどう解決されるのでしょうか。

裁判例は、本件建物のうち被告持分(3分の1.注:妻の持ち分)を超える持分3分の2(注:夫の持ち分)の部分については、権原なくして占有していることが明らかであり、これは原告(注:夫)持分権を侵害する不法行為にあたる」とに判断しました。

そして、夫は妻に対して、使用料相当損害金の支払いを求めることができるとしました。(持ち分の割合については事例ごとに判断になります。)

妻は、自宅不動産に住み続けることができる代わりに、夫に対して、持ち分を超える分の使用料相当額の損害金を支払わなければならないという判断です。






2020年5月12日火曜日

財産分与・オーバーローンの自宅不動産 その3

「離婚問題・破綻後に自宅不動産に住み続けられるのか」でご紹介した東京地裁平成24年12月27日判決(判例時報2179号78頁)を参考にした、オーバーローンの自宅不動産についての検討の3回目です。

裁判例は、オーバーローンのために「財産分与」では清算の対象とされない不動産についても、「共有関係」の審理において清算を図ることができるとしました。

今回は、具体的な清算方法について解説します。

裁判例(自宅不動産の所有名義は夫、妻が居住のケース)は、妻の固有財産がいくら不動産の支払いに充てられたのかについて、次のように認定しました。

・頭金
妻が特有財産(婚姻前の預金)から拠出した住宅ローンの頭金
・同居中
同居中の住宅ローン返済総額の半分
・別居後
夫の住宅ローン支払い分のうち妻への婚姻費用の支払い分とみなすことができる額

別居後の支払い分について補足すると、
例えば、本来の婚姻費用は月額20万円のはずであるが、夫が住宅ローンを支払い続け、妻が自宅に住み続けていることを考えて、婚姻費用が月額10万円とされていた場合には、月10万円が妻に婚姻費用として支払われる代わりに住宅ローンの支払いに充てられたとみることができると考えたことになります。

そして、不動産の評価額に照らして、妻の持ち分を認定しました。

妻の出捐が共有関係において評価されたといえます。

オーバーローンの不動産は、財産分与では清算の対象とならなくても、共有関係で清算するという方法があるということです。

また、不動産には妻が住み続け、夫は使用できていない点については、どうやって夫の補償を図るかについて、検討されました。
それは次回に解説します。






2020年5月11日月曜日

財産分与・オーバーローンの自宅不動産 その2

「離婚問題・破綻後に自宅不動産に住み続けられるのか」でご紹介した東京地裁平成24年12月27日判決(判例時報2179号78頁)を参考にした、オーバーローンの自宅不動産についての検討の2回目です。

この裁判例の注目されるところは、自宅不動産がオーバーローンであったために、離婚の際には財産分与の対象とされず、清算がされないままになってしまっている不公平な事態に注目し、その解決を図ったことです。

裁判例のケースでは、自宅不動産を購入する際に、妻も頭金の一部を出捐していましたし、住宅ローンの支払いについて妻の貢献がありました。

しかし、オーバーローンであったため、財産分与の手続きにおいては清算の対象とはされませんでした。

この点、裁判例は、
「その結果、夫婦共有財産と判断された不動産について清算が未了のままとなる事態が生じ得るが、この場合、不動産の購入にあたって自己の特有財産から出捐をした当事者は、かかる出捐をした金員につき、離婚訴訟においては、その清算につき判断がなされないまま財産分与額を定められてしまい、他方で、たまたま当該不動産の登記名義を有していた相手方当事者は、出捐者の損失のもとで不動産の財産的価値のすべてを保有し続けることができるという極めて不公平な事態を招来することになる。」
との価値判断を示しました。

そして、不公平な事態を解消するため、
夫婦の一方がその特有財産から不動産売買代金を支出したような場合には、当該不動産が財産分与の計算においてオーバーローン又は残余価値なしと評価され、財産分与の対象財産から外されたとしても、離婚訴訟を担当した裁判所が特有財産から支出された金員につき何ら審理判断をしていない以上、離婚の際の財産分与とは別に、当該不動産の共有関係について審理判断がされるべきである。」
として、財産分与とは別に、共有関係について審理することで解決を図るべきとの考えを示しました。

オーバーローンのために「財産分与」では清算の対象とされない不動産についても、「共有関係」の審理において清算を図る方法があるということです。

次回は、具体的にどのように清算が図られたのかを解説します。






2020年5月8日金曜日

財産分与・オーバーローンの自宅不動産 その1

「離婚問題・破綻後に自宅不動産に住み続けられるのか」でご紹介した東京地裁平成24年12月27日判決(判例時報2179号78頁)を参考に、オーバーローンの自宅不動産の財産分与について、何回かに分けて考えたいと思います。

まず、オーバーローンの不動産は財産分与の対象とはならないとされています。

この点、東京地判平成24年12月27日も、
住宅ローン残高が不動産価値を上回るいわゆるオーバーローンの不動産や、不動産の価値と住宅ローン残高がほぼ同程度であるとして残余価値がないと評価された不動産は、積極財産として金銭評価されることがないため、夫婦間の離婚訴訟の財産分与の手続においては、清算の対象とはならない。」
としています。

オーバーローンの不動産は、積極財産として金銭評価されることがないため、財産分与において、清算の対象とはなりません。

住宅ローンを組んで夫婦で住んできた自宅を、離婚にあたってどうするかは多くのケースで問題となります。
財産分与の対象となるか否かは、その不動産がオーバーローンであるかどうかによることになります。



2020年5月7日木曜日

離婚問題・破綻後に自宅不動産に住み続けられるのか

夫婦の関係が悪くなり、一方が家を出ていき別居となったとします。残された方は、そのまま自宅に住み続けることができるのか不安に思うことでしょう。

例えば、Aさんが、配偶者であるBさんと子供を残して家を出ていったとして、自宅(婚姻期間中に住宅ローンを組んで購入)がAさん名義の場合、Bさんと子供は家を出ていかなければならないのでしょうか。

この点、自宅不動産が婚姻期間中に住宅ローンを組んで購入されたものであれば、それは夫婦共有財産にあたります。
夫婦の双方に不動産を占有する権原があり、一方が他方に対し明渡しを求めることは困難です。

そのため、上述の例では、Aさんからの明け渡しは困難です。
自宅不動産の名義がAさんとされていても、同様です。
Bさんと子供は自宅に住み続けることができます。

裁判例としては、東京地判平成24年12月27日が参考になります。
離婚後の事例ですが、自宅が夫婦共有財産であることを理由として明け渡しを認めませんでした。

(なお、この裁判例は、オーバーローンの不動産の財産分与についても非常に参考となる判断をしています。)



2020年5月4日月曜日

民法(債権法)が変わります その6・賃貸借

2020年4月1日から改正された民法(債権法)が施行されています。
今回は、賃貸借に関する改正についてお書きします。

賃貸借は、アパートや店舗の貸し借りなど、多くの人の生活に密着した契約ですが、改正前の民法には、敷金や原状回復などについての基本的なルールの規定がありませんでした。
改正法では、次のようなルールが条文に明記されました。

1 敷金・原状回復
敷金から差し引くことができる費用の範囲を定めました。
賃借人に帰責事由のない損傷や通常使用による損傷については、賃借人の原状回復義務の範囲外とされました。

具体的には、
・通常使用による損耗
・経年劣化
・賃借人に責任のない損傷
の補修費用を敷金から差し引くことはできません。

クロスの変色や画びょうの穴(下地ボードの張替えは不要な程度のもの)などは、通常損耗・経年劣化の例とされます。
一方で、ペットによる柱の傷やタバコのヤニ・臭いなどは、通常損耗・経年劣化にあたらない例とされ、原状回復が必要となります。
国土交通省住宅局「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」参照)

2 修繕
賃貸人による修繕が新たに定められました(民法607条の2)。

建物の修繕が必要な場合、賃貸人に通知しても相当の期間内に必要な修繕をしてもらえないときには、賃貸人が自分で修繕ができます。
修繕費用を賃貸人に請求することになります。

3 一部使用不能等による賃料減額
建物の一部が賃借人の責任によらずに一部使用不能となった場合、その割合に応じて、賃料は当然に減額になるとされました(民法611条)。

改正前は、減額を請求できるとされていましたが、改正後は、当然に減額となるとされました。




2020年5月1日金曜日

民法(債権法)が変わります その5・消滅時効

2020年4月1日から改正された民法(債権法)が施行されています。
今回は消滅時効の期間の改正についてお書きします。

これは身の回りの債務にも大きく関係する改正だといえます。

改正前の民法は、
・消滅時効の期間は原則として10年としつつ、
・職業別の短期の消滅時効期間(飲食代金は1年、医師の診療報酬は3年など)
を設けていました。

改正後の民法では、
・債権者が権利を行使することができることを知った時か5年間行使しないとき
・権利を行使することができる時から10年間行使しないとき
に時効によって消滅すると定められました(民法166条1項)。

そして、職業別の短期消滅時効の特例は廃止されました。

法務省の説明では、消滅時効期間は原則として「5年」としたうえで、
債権者自身が自分が権利を行使することができることを知らないような債権は、権利を行使することができる時から「10年」とされています。

例えば、飲食代金については、
改正前は1年で時効によって消滅しましたが、
改正後は、原則5年で時効(ケースによっては最長10年)によって消滅すると変わりました。
飲食店にとっては、支払いを請求できる期間が延びたことになります。








2020年4月30日木曜日

民法(債権法)が変わります その4・法定利率

2020年4月1日から改正された民法(債権法)が施行されています。
今回は法定利率の改正についてお書きします。

法定利率は、当事者間に合意がない場合に適用される利率で、民法で定められています。
例えば、交通事故などの不法行為の損害賠償債権の遅延損害金は法定利率によります。

改正前は、法定利率は年5%で固定されていました。

しかし、社会では極めて低い金利が続いており、年5%では高すぎるとの批判などがありました。

改正民法では、
法定利率は3%に引き下げられ、
3年ごとに1%刻みで改訂する変動制が導入されました(民法404条2項、3項、4項)。

3%への引き下げに加え、市中の金利動向に合わせて法定利率が自動的に変動する仕組みが新たに導入されました。

変動制を導入している国は多く、私が担当したある事件(カナダの州法が問題となるケース)では、3か月に1回、コートオーダーの金利が0.01%刻みで定められていました。

法定利率は、当事者間に利率についての合意がない場合に適用されますので、合意がある場合には、その合意が優先されます。

離婚の慰謝料などを調停や裁判上の和解で定める場合に、遅延損害金の利率について取り決めれば、その利率が適用されます。




2020年4月29日水曜日

民法(債権法が変わります) その3・約款

2020年4月1日から改正された民法(債権法)が施行されています。
今回は、約款を用いた取引についての改正をお書きします。

ネットサービスを利用しようとしたとき、「約款」に同意するかどうかの確認画面が出て、小さな文字で書かれた詳細な内容に戸惑ったことがある方、多いのではないでしょうか。

不特定多数の顧客を相手方として取引を行う場合、詳細な契約条項を「約款」として定めておき,約款に基づいて契約をするという方法が、広く用いられています。

画一的な条件で取引できることは、特にネットサービスの普及によって、社会が求めている変化ともいえるでしょう。

とはいえ、消費者の多くは約款の詳細な内容を認識していないのが実情のため、のちにトラブルとなるケースが多くありました。

そこで、改正民法では、約款がどのような時に有効で、どのような時に変更できるのかなどを明文で定めました。(ここでは概略をお伝えします。)

1 定型約款が契約の内容となる要件(みなし合意)

①当事者の間で定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたときや、
②定型約款を契約の内容とする旨をあらかじめ顧客に「表示」して取引を行ったときは、個別の条項について合意をしたものとみなされます(民法548条の2第1項)。

これらの場合は、客の側が、約款にどのような条項が含まれるのかを認識していなくても、合意をしたものとみなされるので、注意が必要です。

例えば、「同意する」ボタンを押して合意した場合などには、契約の内容とされるでしょう。

ただし、信義則に反して顧客の利益を一方的に害する不当な条項は、効果が認められません。

2 定型約款の変更の要件

現在の実務では、事業者が、既存の契約も含めて一方的に約款の内容を変更することがあります。改正民法は変更が可能とされるルールを定めました。

①変更が顧客の一般の利益に適合する場合や、
②変更が契約の目的に反せず、かつ、変更に係る諸事情に照らして合理的な場合
に限って、定型約款の変更が認められました(民法548条の4第1項)。

約款に「当社の都合で変更することがあります」と記載してあったとしても、内容に関わらず、一方的に変更できるわけではないことが分かります。

顧客にとって利益にならないような変更は、事前にネットなどで周知することが必要です。






2020年4月28日火曜日

民法(債権法)が変わります その2・保証人の保護

2020年4月1日から改正された民法(債権法)が施行されています。

今回は「保証人の保護を進めるための改正」についてお書きします。

保証人になったことで多額の債務を負うことになってしまった、というような話を耳にしたことがあると思います。保証人になるときには注意しなければ、と思っている方も多いでしょう。

しかし、実際には、会社が事業資金の借り入れをする場合、個人を保証人としてつけることを金融機関から求められることが多く、経営者の親族や友人が頼まれて保証人になっていることも少なくありません。
アパートを借りるときの保証人などもイメージしやすいかもしれません。

改正法は、個人が保証人になる場合の保証人の保護を進めるために、いくつかの改正をしました。


まず、極度額の定めのない個人の根保証契約は無効となりました。

根保証契約とは、一定の範囲に属する不特定の債務をまとめて保証する契約をいいますが、不特定の債務を保証することになるため、債務が膨らんでいきかねない契約です。

そうした根保証契約に極度額の定めがないと、保証人が予想もしなかった額を支払わなければならない事態にもなり(主債務者の不履行が続けば債務がどんどん膨らんでいくことも起こります)、保証人に極めて酷な結果となりえます。

そこで、個人の根保証契約の場合には極度額を定めなければ無効との改正がなされました。
保証人が支払いの責任を負う上限金額を定めることが必要とされ、責任に限定がなされました。


次に、公証人による保証意思確認の手続きが新設されたことも大きな改正点です。

個人が事業用融資の保証人になろうとする場合について,公証人による保証意思確認の手続が新設されました。

公証人の面前で、自ら保証意思があることを述べることが必要とされました。
公証人から、保証人になった場合のリスクの説明を受け、リスクを理解したうえで、保証に同意するかの確認がされます。

この手続を経ないでした保証契約は無効とされます。

ただし、この手続きは、事業に関与していない親戚や友人が安易に保証人になることがないようにと想定しているので、対象となる人は限られます。

次のような場合は除かれます。
1 主債務者が法人である場合
法人の理事,取締役,執行役や,議決権の過半数を有する株主等
2 主債務者が個人である場合
主債務者と共同して事業を行っている共同事業者や、主債務者の事業に現に従事している主債務者の配偶者



2020年4月27日月曜日

民法(債権法)が変わります 債権法改正・その1

2020年4月1日から、改正された民法(債権法)が施行されました。

「民法の一部を改正する法律」は2017年5月に成立しましたが、3年の準備期間を経て、2020年4月1日から施行されることとなりました。

債権法は明治29年に制定されましたが、その後、120年もの長い間、ほとんど見直されてきませんでした。

債権法は契約についての最も基本となるルールを定めています。
当然ですが、明治29年と現在では大きく時代も事情も異なっています。

社会経済の変化に対応するための大改正となっています。

また、裁判や取引の実務で実際には適用されていたルールがあります。
そうしたルールを債権法の条文でも明確にするという改正もされました。

民法(債権法)は契約についての基本となるもので、実はとても身近な法律です。
それが120年ぶりに変わったのですから、大きな改正であることが伝わると思います。

2020年4月1日から施行された改正法が、どのような点で変わったのか、何回かに分けて解説していきたいと思います。







2020年4月25日土曜日

養育費の取り立てはどう変わる? 民事執行法改正(その3・罰則)

2020年4月1日から施行された改正民事執行法では、債務者が財産開示に応じなかったり、虚偽を述べた場合の罰則が強化されました。

改正前は、30万円以下の過料に科せられるだけでした。

これでは制裁が弱く法が守られないという批判がありました。
実際、財産開示事件が非開示(不出頭や陳述拒絶等)となってしまう割合は40%を超えるようになっていました(平成27年)。

改正法は、不出頭などに対し、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金という刑事罰を課しています(改正法213条)

改正前は、「過料」で、刑事罰ではありませんでした。
改正法では、懲役や罰金という刑事罰が科せられるようになり、より強力な制裁となりました。

ペナルティを強化することで、財産隠しを許さないという姿勢を示した改正となっています。


2020年4月24日金曜日

養育費の取り立てはどう変わる? 民事執行法改正(その2・預貯金)

2020年4月1日から、改正された民事執行法が施行されます。

前回は「勤務先の情報が得られるようになった」ことについて書きました。

今回(その2)は、「預貯金の情報が得られるようになった」改正点について書きます。

元配偶者が、会社員ではなく、自営業者であった場合には、給与ではなく、預貯金に執行していくことが多いと思います。

改正前の民事執行法では、銀行の支店名まで特定することが必要でした。
取り立てる側の高いハードルとなっていました。

しかし、今回の改正により設けられた「第三者の情報提供手続」によって、
預貯金についての情報(支店名、口座番号、額)
について金融機関から情報提供を得ることが可能となりました。

支店名が分からない場合に有効な手続きです。

これまでは、支店名の特定ができないケースでは空振りに終わってしまうことも多かったのですが、今回の改正によって、支店名を特定できるようになりました。

情報提供を求める金融機関は、一つに限らず、2つ以上も可能です。
外国の銀行でも、日本に支店があり、預貯金の受け入れをしていれば可能です。

どの銀行に預けているかわからない場合にも有効な手続きとなるでしょう。

(強制執行をしても完全な弁済を受けられないことなどの疎明は必要です。)






2020年4月23日木曜日

養育費の取り立てはどう変わる? 民事執行法改正(その1・勤務先)

養育費を支払ってもらえずに困っている方に、参考にしてほしい情報です。

2020年4月1日から、改正された民事執行法が施行されます。

「調停で決まったのに、養育費を払ってくれない」
そうしたご相談は多くあります。

養育費について調停調書、判決、公正証書(執行認諾文言付き)で取り決めている場合、民事執行手続きによって、支払いが滞った養育費を取り立てることができます。

新しい民事執行法では、養育費の取り立てを可能にするための改正がいくつかなされました。(1回では書き切れないので何回かに分けてお書きする予定です。)

一つ目は、
元配偶者の勤務先についての情報を取得することができるようになりました。

「取り立てをしたいけれど、相手の勤務先が分からない」

今回の改正で新しく設けられた「第三者からの情報取得手続」が有効となります。

離婚後に元配偶者が職場を変えてしまい、どこで働いているのか分からなくなった場合に、新しい職場の名称や場所について照会することが可能となりました。

具体的には、市区町村や年金事務所に照会をして、元配偶者の勤務先についての情報を得ます。

「第三者からの情報取得手続」を利用して、新しい勤務先の情報が分かれば、給与を差し押さえることで養育費を取り立てることが可能となるでしょう。

(先に財産開示手続きが実施されていること等の要件があります。)


2020年4月22日水曜日

コロナ在宅 家庭問題深刻化

新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐために、家の中で過ごす時間が増えています。

外出制限の長期化で、DV被害や相談が増えているとの報告が、イギリス、フランスなどでは早い段階から相次いでなされました。

内閣府はDV相談窓口として、DV相談+(プラス)を設けました。

0120-279-889(つなぐ、はやく)です。
4月29日からは24時間つながります(29日までは午前9時から午後9時です)。

専門の相談員が対応しています。5月1日からは10か国語で対応可能だそうです。


逃げ場がない中で、一人で悩みを抱えていませんか。

家庭問題が深刻化する中、弁護士としてできることを考え、緊急事態宣言の期間中、離婚の相談を無料(初回、30分)にしました。

電話・スカイプでの相談をお受けしています。相談フォームで受け付けています


2020年4月21日火曜日

コロナ不況 養育費の減額について

新型コロナウィルス感染拡大による景気後退が問題となっています。

「元夫の収入が減った場合には、養育費は減らされてしまうのか」
「離婚の調停で養育費が定められたが、その時より収入が減って苦しい」

支払う側にも、受け取る側にも、生活に直結する問題です。

養育費減額調停は、調停や裁判などで定められた養育費の減額を求める調停です。
家庭裁判所に申し立てをします。

減額が認められる事情としては、
・支払い側の収入の減少、失業など
・支払う側の病気
・受け取る側の収入の増加
などがあります。

養育費減額調停を申し立てて、新しい養育費を定めるという手続きです。

受け取る側の同意がないのに、一方的に減額することは認められていません。

緊急事態宣言の期間中も申し立てはできます。郵送で申し立てをすることもできます。
(東京家庭裁判所のお知らせ「家事受付をご利用のみなさま」参照)



2020年4月20日月曜日

ハーグ条約 子の返還:調停の「合意」も変更可の判断

ハーグ条約の事案に関して、最高裁判所の新しい判断が出されました。

時事通信社の時事ドットコムは、次のように報じています(2020年4月17日)

国外に連れ去られた子の扱いを定めたハーグ条約に基づき、父親がいるロシアに子を返還する合意が調停で成立した後、事情の変化を理由に返還しないよう変更できるかが争われた許可抗告審の決定で、最高裁第1小法廷(池上政幸裁判長)は「変更できる」との初判断を示した。16日付。
ハーグ条約の国内手続きを定めた実施法は、子の返還を命じる「終局決定」が確定しても、事情の変化が生じた場合は変更できると規定。許可抗告審では、話し合いによる調停での合意も変更可能な「終局決定」に含まれるかが争点だった。
 小法廷は「調停が成立した場合でも、返還を維持することが子の利益の観点から不当となることはあり得る」と指摘した上で、「規定を類推適用し、変更できると解するのが相当だ」と判断。母親の申し立てを却下した二審東京高裁決定を破棄、審理を同高裁に差し戻した。
 決定によると、日本人の母親と子どもは2016年、ロシア人の父親の元を離れ日本に帰国。母親と父親は調停で子をロシアに返還することで合意したが、子が拒否した。」

ハーグ条約については、国内外で、裁判所の判断が注目されています。

外国の外交官と話す機会などの際も、ハーグ条約についての日本の裁判所の動きに関して質問されることが多いです。

外務省はハーグ条約についてアニメーション(ホワイトボードアニメーションなど)を用いて説明しています。







2020年4月19日日曜日

離婚届けを受理されたくないとき(不受理申出)

夫婦喧嘩の際に、売り言葉に買い言葉で、離婚届けに署名押印して相手に渡してしまったけれど、冷静になって考えると、離婚はしたくない…

「離婚届けを出されてしまったら、離婚するしかないのか?」

こうした相談は珍しくありません。

サインして渡してしまった離婚届けはなかなか取り返せず、不安でたまらなくなって相談にいらっしゃいます。

離婚届けの不受理申出という制度を知っていますか?

役所の戸籍係に行って、離婚届の不受理申出用紙に必要事項を記載し、署名押印して届出します。

不受理申出(不受理届)がなされた後は、相手方が離婚届けを提出しても、離婚(協議離婚)が成立することはありません。


不受理届と離婚届けのどちらが先かのタイミングが争われるときもあります。

不受理申出を本籍地に出しておいた方が、離婚届けが誤って受理されてしまうリスクは減らせますが、本籍地以外の役所でも届け出ができます。

「本籍地が住所地から遠く離れているけれど、相手方が今にも離婚届けを提出するかもしれない」
というような場合は、
スピード重視で、住まいから近い役所で不受理申出をする方がいいでしょう。

(どちらが先かが数時間差で争われた事案もありました。)






2020年4月18日土曜日

養育費・婚姻費用の算定表改訂

2019年12月23日に、養育費・婚姻費用の算定表が改訂されました。

およそ16年ぶりの改訂です。

旧算定表に対しては、標準とされる金額が低く、ひとり親世帯が生活していくことが困難であるとの批判がありました。

日弁連(日本弁護士連合会)は2012年に意見書を出して、2016年に提言を発表するなど、算定表を見直すための活動を行っていました。

そうした声を踏まえて、裁判所でも研究がなされ、今回の改訂となっています。

「改訂された算定表で何が変わったか?」

ほとんどのケースで養育費・婚姻費用が増額されることになりました。

ただし、増額の幅は、義務者(多くの場合元夫)の所得によって異なります。

具体的には、
高所得者の場合の増額の幅は比較的大きい
といえるでしょう。

私が担当したケースでも高額所得者の場合にはかなりの増額になったものがいくつかありました。
改訂の際に検討された問題意識を、具体的なケースの主張に盛り込んで議論していくことも有効になるでしょう。


子供の成長発達を保障するという視点が、ある程度は、盛り込まれた改訂だと思いますが、十分な水準かというと疑問です。

国際離婚を担当する際に、諸外国の養育費の水準を調査する機会も多いのですが、ヨーロッパやアメリカなどに比べると、日本の養育費は低いのが実情だと思います。

まだまだ検討されるべき問題が多い分野だと考えています。


2020年4月17日金曜日

愛宕国際法律事務所のブログを始めました

ブログを始めることにしました。今、日本では緊急事態宣言が出され、未曽有の事態となっています。外出を控えて家にいるために、ネットを見る機会が増えた方も多いと思います。
弁護士として気が付いたこと、お伝えできることを少しずつ書いていきます。