2020年5月15日金曜日

財産分与・オーバーローンの自宅不動産 その4

「離婚問題・破綻後に自宅不動産に住み続けられるのか」でご紹介した東京地裁平成24年12月27日判決(判例時報2179号78頁)を参考にした、オーバーローンの自宅不動産についての検討の4回目です。

前回まで、オーバーローンの不動産は、財産分与では清算の対象とならなくても、共有関係で清算する方法があることを紹介しました。
妻側の貢献を評価する方法についての解説をしました。

今回は、夫側の権利はどのように補償されるかについて書きます。


自宅不動産は夫婦の共有であると認められましたが、別居となり、不動産には妻が住み続けている場合、夫が使用できていない点はどう解決されるのでしょうか。

裁判例は、本件建物のうち被告持分(3分の1.注:妻の持ち分)を超える持分3分の2(注:夫の持ち分)の部分については、権原なくして占有していることが明らかであり、これは原告(注:夫)持分権を侵害する不法行為にあたる」とに判断しました。

そして、夫は妻に対して、使用料相当損害金の支払いを求めることができるとしました。(持ち分の割合については事例ごとに判断になります。)

妻は、自宅不動産に住み続けることができる代わりに、夫に対して、持ち分を超える分の使用料相当額の損害金を支払わなければならないという判断です。