2020年5月12日火曜日

財産分与・オーバーローンの自宅不動産 その3

「離婚問題・破綻後に自宅不動産に住み続けられるのか」でご紹介した東京地裁平成24年12月27日判決(判例時報2179号78頁)を参考にした、オーバーローンの自宅不動産についての検討の3回目です。

裁判例は、オーバーローンのために「財産分与」では清算の対象とされない不動産についても、「共有関係」の審理において清算を図ることができるとしました。

今回は、具体的な清算方法について解説します。

裁判例(自宅不動産の所有名義は夫、妻が居住のケース)は、妻の固有財産がいくら不動産の支払いに充てられたのかについて、次のように認定しました。

・頭金
妻が特有財産(婚姻前の預金)から拠出した住宅ローンの頭金
・同居中
同居中の住宅ローン返済総額の半分
・別居後
夫の住宅ローン支払い分のうち妻への婚姻費用の支払い分とみなすことができる額

別居後の支払い分について補足すると、
例えば、本来の婚姻費用は月額20万円のはずであるが、夫が住宅ローンを支払い続け、妻が自宅に住み続けていることを考えて、婚姻費用が月額10万円とされていた場合には、月10万円が妻に婚姻費用として支払われる代わりに住宅ローンの支払いに充てられたとみることができると考えたことになります。

そして、不動産の評価額に照らして、妻の持ち分を認定しました。

妻の出捐が共有関係において評価されたといえます。

オーバーローンの不動産は、財産分与では清算の対象とならなくても、共有関係で清算するという方法があるということです。

また、不動産には妻が住み続け、夫は使用できていない点については、どうやって夫の補償を図るかについて、検討されました。
それは次回に解説します。