2020年5月4日月曜日

民法(債権法)が変わります その6・賃貸借

2020年4月1日から改正された民法(債権法)が施行されています。
今回は、賃貸借に関する改正についてお書きします。

賃貸借は、アパートや店舗の貸し借りなど、多くの人の生活に密着した契約ですが、改正前の民法には、敷金や原状回復などについての基本的なルールの規定がありませんでした。
改正法では、次のようなルールが条文に明記されました。

1 敷金・原状回復
敷金から差し引くことができる費用の範囲を定めました。
賃借人に帰責事由のない損傷や通常使用による損傷については、賃借人の原状回復義務の範囲外とされました。

具体的には、
・通常使用による損耗
・経年劣化
・賃借人に責任のない損傷
の補修費用を敷金から差し引くことはできません。

クロスの変色や画びょうの穴(下地ボードの張替えは不要な程度のもの)などは、通常損耗・経年劣化の例とされます。
一方で、ペットによる柱の傷やタバコのヤニ・臭いなどは、通常損耗・経年劣化にあたらない例とされ、原状回復が必要となります。
国土交通省住宅局「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」参照)

2 修繕
賃貸人による修繕が新たに定められました(民法607条の2)。

建物の修繕が必要な場合、賃貸人に通知しても相当の期間内に必要な修繕をしてもらえないときには、賃貸人が自分で修繕ができます。
修繕費用を賃貸人に請求することになります。

3 一部使用不能等による賃料減額
建物の一部が賃借人の責任によらずに一部使用不能となった場合、その割合に応じて、賃料は当然に減額になるとされました(民法611条)。

改正前は、減額を請求できるとされていましたが、改正後は、当然に減額となるとされました。