2020年5月11日月曜日

財産分与・オーバーローンの自宅不動産 その2

「離婚問題・破綻後に自宅不動産に住み続けられるのか」でご紹介した東京地裁平成24年12月27日判決(判例時報2179号78頁)を参考にした、オーバーローンの自宅不動産についての検討の2回目です。

この裁判例の注目されるところは、自宅不動産がオーバーローンであったために、離婚の際には財産分与の対象とされず、清算がされないままになってしまっている不公平な事態に注目し、その解決を図ったことです。

裁判例のケースでは、自宅不動産を購入する際に、妻も頭金の一部を出捐していましたし、住宅ローンの支払いについて妻の貢献がありました。

しかし、オーバーローンであったため、財産分与の手続きにおいては清算の対象とはされませんでした。

この点、裁判例は、
「その結果、夫婦共有財産と判断された不動産について清算が未了のままとなる事態が生じ得るが、この場合、不動産の購入にあたって自己の特有財産から出捐をした当事者は、かかる出捐をした金員につき、離婚訴訟においては、その清算につき判断がなされないまま財産分与額を定められてしまい、他方で、たまたま当該不動産の登記名義を有していた相手方当事者は、出捐者の損失のもとで不動産の財産的価値のすべてを保有し続けることができるという極めて不公平な事態を招来することになる。」
との価値判断を示しました。

そして、不公平な事態を解消するため、
夫婦の一方がその特有財産から不動産売買代金を支出したような場合には、当該不動産が財産分与の計算においてオーバーローン又は残余価値なしと評価され、財産分与の対象財産から外されたとしても、離婚訴訟を担当した裁判所が特有財産から支出された金員につき何ら審理判断をしていない以上、離婚の際の財産分与とは別に、当該不動産の共有関係について審理判断がされるべきである。」
として、財産分与とは別に、共有関係について審理することで解決を図るべきとの考えを示しました。

オーバーローンのために「財産分与」では清算の対象とされない不動産についても、「共有関係」の審理において清算を図る方法があるということです。

次回は、具体的にどのように清算が図られたのかを解説します。