2020年4月29日水曜日

民法(債権法が変わります) その3・約款

2020年4月1日から改正された民法(債権法)が施行されています。
今回は、約款を用いた取引についての改正をお書きします。

ネットサービスを利用しようとしたとき、「約款」に同意するかどうかの確認画面が出て、小さな文字で書かれた詳細な内容に戸惑ったことがある方、多いのではないでしょうか。

不特定多数の顧客を相手方として取引を行う場合、詳細な契約条項を「約款」として定めておき,約款に基づいて契約をするという方法が、広く用いられています。

画一的な条件で取引できることは、特にネットサービスの普及によって、社会が求めている変化ともいえるでしょう。

とはいえ、消費者の多くは約款の詳細な内容を認識していないのが実情のため、のちにトラブルとなるケースが多くありました。

そこで、改正民法では、約款がどのような時に有効で、どのような時に変更できるのかなどを明文で定めました。(ここでは概略をお伝えします。)

1 定型約款が契約の内容となる要件(みなし合意)

①当事者の間で定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたときや、
②定型約款を契約の内容とする旨をあらかじめ顧客に「表示」して取引を行ったときは、個別の条項について合意をしたものとみなされます(民法548条の2第1項)。

これらの場合は、客の側が、約款にどのような条項が含まれるのかを認識していなくても、合意をしたものとみなされるので、注意が必要です。

例えば、「同意する」ボタンを押して合意した場合などには、契約の内容とされるでしょう。

ただし、信義則に反して顧客の利益を一方的に害する不当な条項は、効果が認められません。

2 定型約款の変更の要件

現在の実務では、事業者が、既存の契約も含めて一方的に約款の内容を変更することがあります。改正民法は変更が可能とされるルールを定めました。

①変更が顧客の一般の利益に適合する場合や、
②変更が契約の目的に反せず、かつ、変更に係る諸事情に照らして合理的な場合
に限って、定型約款の変更が認められました(民法548条の4第1項)。

約款に「当社の都合で変更することがあります」と記載してあったとしても、内容に関わらず、一方的に変更できるわけではないことが分かります。

顧客にとって利益にならないような変更は、事前にネットなどで周知することが必要です。